事業再構築補助金 第1次公募を分析する

コロナ禍で私のクライアントも

つい、先日、支援させていただている企業の事業再構築補助金の第2次公募への申請を終えました。

正直言えば、もう少し時間が欲しかったと謂うところですが、限られた条件の中で、それなりの事業計画の策定は出来たかなと謂う感じです。

私も一般社団法人 日本経営士会 と謂う「認定経営革新等支援機関(以下、「認定支援機関」と略します)に所属していますが、これまで既存のクライアントの目の前の支援に明け暮れており、補助金申請支援活動にはあまり注力してきませんでした。しかし、近時、この補助金に対する内外の注目度及び中小企業の関心も高く、以前書きました様に1兆2千億円近い大規模な予算を講じた政府~経済産業省の本気度は伝わってくるものがありました。

実は、私のクライアントさんの多くは、長年の業績不振に苦しんでいる方が主体でした。

それが、このコロナ禍で廃業を決断される先が徐々に増えてきました。「再構築は諦めて暫く休みたい」と謂う方も少なくありませんでした。

そして、彼らの殆どは債権者に迷惑をかけることもなく、済々と業務を閉じていきました。

これで私も晴れて「お役ご免」と謂うことです。

ところが、今度は、一時支援金(今は月次支援金と謂う制度に引き継がれていますが)の
「事前確認業務」を通して親しくなった先から、事業再構築の相談を受けました。

それが、今回の申請に繋がったと謂うことです。

第1次公募を巡る噂

因みに、その時点では、既に第1回公募(4月15日~30日。但し、サーバーダウンにより5月7日まで延長)は始まっており、締切日までに間に合いそうもありませんでした。

実は当時、関係者の間では一つの「噂」が駆け巡っていました。

「第1次公募は採択率が高い」

4月下旬、「なんとか第1次公募にて申請したい」との思いからか、私のところにも「確認書」を発行してくれ、と謂う依頼がツテを頼って複数、舞い込んできました。

この制度では、事業者は先の認定支援機関と共同で事業計画を策定する必要があり、そのエビデンスとして申請時に認定支援機関の「確認書」の添付が求められます。

彼らは、それを欲しがったのです。
実際に共同策定もしていませんし、事業内容について全く検討してもいないにも拘わらず、です。
勿論、最初から詰め直す時間など残されていません。「謝礼は出すから」と食い下がられましたが、勿論、お断りしました。

これらは極端な例ですが、当時、この業界では申請の為に、手の空いた「認定支援機関探し現象」が起こっていました。

とにかく、第1回に滑り込めさえすれば、採択されるに違いない。

そんな浮足立った、不可思議な風潮がそこにはありました。

私は当時、そんな業界の風潮を「そんなものは都市伝説だ。むしろ、安易な申請が増えれば、
逆に申請そのものが殺到することにより、結果的に採択率は低下する筈だ」と主張していました。

私の周辺にいた方なら、覚えておられる筈です。

この「都市伝説」が飛び交った事由について、私は今年度の「ものづくり補助金」等の採択率が初回分につき、かなり高かったこと等から広まったと見ていました。

別のテーマになりますので、ここでの詳細な立証は割愛しますが、次の点だけ指摘しておきます。
初回分の採択率が高かったのは事実ですが、初回は申請期間や申請可能な枠の種類が限られており、その為、申込の絶対数が相対的に少なかった結果として採択率が上がったと見ています。
事実、その後の応募では回を重ねる度に、申請数は順調に増え、反対に採択率は低下していきました。

1次公募 採択結果

さて、事業再構築補助金の第1次の採択状況が発表されました。

申請総数22千件、採択数8千件 採択率36%

近時の他の補助金が凡そ4割程度ですから、あきらかに「低い」数字です。
申請の絶対数もやはり相対的に高い数字です。
「都市伝説」は見事に崩壊しました。

申請数の多さも、先の「都市伝説」に踊らされた結果、「申請さえしておけば何とかなるだろう」と謂う申請が多かったから、と私は見ています。

前記風潮に乗り、事業計画、それ以前の事業の構想自体が甘いものが多かったことが採択率の低下に拍車をかけたのではないか、と。

因みに、もう一つ興味深いデータ(経産省公表)があります。

緊急事態宣言特別枠 
申請件数  5,181件 採択件数 2,866件 採択率 55.3%
その他枠      
申請件数 17,050件 採択件数 5,150件 採択率 30.2%

明らかに、緊急事態宣言特別枠(以下、「特別枠」と謂います)は通常枠(上記「その他枠」の大半を占めます)等に比し、採択率が顕著に高くなっています。

本制度は枠によって、補助上限額や補助率が異なりますが、特別枠は上限額(規模により異なります)も少額且つ補助率は高く、そもそも、事業再構築補助金の構想が公示された当初にはなかったもので、正式発表直前に出来た枠でした。

そして、全5回の募集が予定される中、この枠は第2次で終了が予定されてもいました。
(近時の4回目の緊急事態宣言により3次以降も実施される可能性が出てきましたが)

今回、経産省から正式発表はされていませんが、日刊工業新聞によると、採択された金額の合計は約2200億円と謂うことです。(=1件当たり約2700万円)
(註:そもそも補助金制度は、通常、採択発表時には補助金額は確定しません。採択後、必要金額を精査した上で見積書等添付し事務局に交付申請し、その交付決定時に交付額が確定します)

単純計算すれば、今回採択額は当初予算総額の2割と少し。

期間限定の緊急事態特別宣言枠を考慮すれば、ほぼ均等な運営と考えられます。

で、特別枠とその他枠の採択率の差は、上記を勘案した政策的なものと私は見ています。

基本的な審査点等は枠を超えても不変と思われますので、合格ラインの点数(風の噂によれば、
3人の審査員の採点の合計と謂われています)そのもので両者に差をつけているのかなと
邪推?しています。「あと1回で終了、金額も少額の特別枠」を優遇すると謂う貌で。

第1次公募 採択結果が示すもの

今般、経産省が公表した認定支援機関別の採択実績(採択数字が微妙に合いませんが)等を加工して下の表を作成してみました。
非常に顕著な特徴が浮かび上がってきました。

まず、金融機関が申請・採択とも多いですが、これにはカラクリがあると思います。

補助金額が3000万円超の場合、金融機関の確認書が必須であり、他の認定支援機関の確認書と共に提出することとなりますが、金融機関分さえあれば十分なので、どうしても金融機関偏重となってしまいます。

更に、箔をつける為、そして補助期間中の「金融機関からの支援」の蓋然性が高いことを示す為に、実際は他の認定支援機関と事業計画を策定していても、申請時には敢えて、金融機関(の確認書)を前面に出す動きがあります。
金融機関も形式的な審査の上、概ねこれらに積極的に対応しています。
(因みに「提出機関による差別は一切ない」と経産省は断言しています)

なんと言っても、金融機関は確認書発行に通常の場合、報酬を要求しませんので。

つまり、実際には申請者(事業者)と一緒に事業計画に智慧を絞ると謂う行為をしている金融機関は殆ど存在しないにも拘わらず、上記の数字となっていると見ています。

したがって、ここでは金融機関を除いて、他機関について分析してみました。

なお、商工会・商工会議所も原則無料であり、金融機関に似た傾向があります。

さて、金融機関を除いて、申請数を見ると、やはり圧倒的に多いのが税理士関係です
日頃から顧客と密接に繋がっている結果だと分析しています。

ところが、その採択率を見ると他機関・団体と比較して低位に甘んじています。

一方で、申請数こそ多くはないのですが、中小企業診断士や民間コンサル会社の採択率の高さが目に付きます。

これらを見れば、巷間謂われている様に、補助金はプロ同士の熾烈な争い、そして補助金支援に特化しているとみられる専門家・専門機関ほど採択率が高い傾向が見られ、やはり採択には一定のノウハウ・スキル・テクニックがあると謂うことが是認されそうです。

今回はこれまで。

コメント

PAGE TOP