事業再構築補助金 シリーズ
「フルーツサンド税理士法人」騒動を考える
「フルーツサンド税理士法人」騒動
事業再構築補助金と言えば、「緊急事態宣言特別枠」の第1次公募結果が公表(6月16日)された直後、ネットで「フルーツサンド税理士法人」なるものが話題になりました。
2800件以上の採択事例が公表されたのですが、なんとその内、事業計画名が全く同じもの=「フルーツサンド製造販売事業の新規展開による事業再構築計画」が4件も掲示されていたのです。私も公表当日、それと知らずに公表リストを斜め読みしていて、思わず「うん?」と思った記憶があります。
しかも「事業計画」欄の記載内容も
「** に飲食店 **店舗を経営する当社は、新型コロナウイルス感染拡大により売上高が大幅に減少したことを受け、コロナ禍・アフターコロナの顧客ニーズに対応した形態のフルーツサンド販売店を新たに展開し、コロナ禍でも成長し続けられる事業の柱を構築することとする。 」
と**部分だけが特定地名・店舗数で、残りは一言一句同じ表現が並んでいたのです。地域は全国に亘っています。
そして、認定経営革新等支援機関も同一の先でした。
正式名称等は別表をご覧ください。(当該採択企業名・支援機関名は公式HPに本人承諾のもと掲示されているので本HP掲載に問題はないと思っていますが)
で、ネットではノリで「フルーツサンド税理士法人」と呼ばれるに至った訳です。
公式HP掲載の採択結果を検索すると
「フルーツサンド税理士法人」騒動(続)
実は、この「フルーツサンド税理士法人」は他にも同様な受託をしているようです。
「パン製造販売事業」「から揚げテイクアウト専門店」等も手掛けているようです。
2営業日後、公表された「一般枠」(5100件強)でも同税理士法人による同旨事例が認められました。
事業内容は異なれど「事業計画」欄の記載文言は、いずれも似たりよったりです。
数日後、公式HPに一つの「案内」が掲示されました。
「第1回公募で採択を発表した案件の中に、重複案件と思われる事業が発見されましたので現在調査中です。不正が判明次第、厳正に対応いたします。公募要領4.(7)⑩にありますように、他の法人・事業者と同一又は類似内容の事業については、厳正に対応いたしますので、十分ご注意ください。」
そして、8月、某紙のオンライン(有料)版に、採択取消の報道が掲載されました。
しかし、今も公式HPにはこれらの「採択事例」は掲載されています。
留まることなく…
結局、本日現在、当局からの公式発表はありませんので、真相は藪の中です。
しかし、同一法人支援による10数件の採択案件の殆ど全てが、「飲食業者がフランチャイズ加入(もしくは製造装置購入or製造方法伝授)等による新事業展開」だったと謂う事実は動きません。
全くのワンパターン。逆に言えば、同法人は、学習塾の1件を除くと本件パターンの類似手法の採択事例ばかりです。
個人的には、この税理士法人はFCと提携して、補助金獲得に特化しているのか、とすら妄想してしまいます。
リストの「事業計画」欄から推測すれば、提出された本来の「事業計画」も一定のパターンが用意され、固有名詞や数字だけ入れれば良い貌になっているのかな、と。未開示ですので想像の域を出ませんが。
同法人は全国展開しています。今回の補助金審査は全国を8ブロックに分け、審査員が手分けして審査しますので、同旨案件に気付かなかったのもやむを得なかったかも知れません。
教訓はいくつかあります。
1.経営者自身の発想、経営者自身の「思い入れ」が大事
2.「お任せください」式の売込みをしてくるコンサルや認定機関には(経営者は)要注意。
たしかに、色々な経営者とお会いしていると、「よく分からないので、アンタに任せるからうまくやってよ」的な言葉に接することもあります。
税務申告等専門性が高く、特殊性があるものは、ある程度プロに任せることも首肯されますし、今回の補助金でも、事業計画をプロ(認定支援機関)と共同で策定することが条件です。
しかし、申請の支援(計画書の策定)と、そもそもの新事業を何にするのか、何をやりたいのか、と謂うことは別です。
新事業あるいは投資内容自体は経営者が自らが決めるものです。
因みに、今回の各申請企業が、どのように処分されるかは分かりませんが、「被害者」として無罪放免になるとも思われません。
もし、自身の発案でなく、計画全体について認定機関に過度に依存していたとすれば、そのこと自体の責任を問われる可能性は否定出来ません。
また、「全てお任せ」&「事業遂行でなく補助金自体が狙い」になっていたとすれば、たとえ、補助金がおりても、今後、果たしてうまく事業の推進・継続が出来るか、素朴な疑問を禁じ得ません。
そういうことを強く感じさせた「騒動」ではありました。
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