事業再構築補助金シリーズ ~不採択事由の研究2~

具体的コメントとその対応

ここからは、これまで収集してきたコメント(改善ポイント)を、列挙していきます。
今後の参考とする為、原則として、今のスタイルが定着した第3回以降の改善ポイント主体にしました。一部は録音データにより書き起こしていますが、大半は申請者自身のメモ、記憶によるものであり、一言一句、完璧な正確性を保証するものではありません。予めご了解ください。

併せて、公募要領と公式サイトで開示された採択事例等を参照し、これら抽象的な改善ポイントについて具体的改善例・対策例を示します。

なお、文中に「要項 39p(2)②」等との記載ある場合は本補助金の公募要領の内、「第7回(1.0版)」分の39頁を参照。

(2)→事業化点、(3)→再構築点
 ①~④は公募要領上の具体的項目を指します。

なお、最近、公式HPに、AIによる分析結果を踏まえた「事業計画書作成のガイドライン」(虎の巻)を掲示。個別の内容では首をかしげる部分も多いのですが、対応の際のヒントにはなるかも知れません。上手く使いましょう。

事業再構築補助金に関する 傾向分析調査 (jigyou-saikouchiku.go.jp)

具体的コメントとその対応 事業化点1

目的に沿った事業実施の為、体制面(人材、事務処理能力等)から補助事業を適切に遂行出来る旨をより明確に記載して欲しい。
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本指摘は「要領38P(2)①」とほぼ同内容(要領原文では「体制」と併記して「最近の財務状況から」と言う文言が入っている)
採択事例を参照すれば、補助事業の具体的体制~時系列・項目別に担当者、その属性・専門分野等詳細を明記するとベター。また担当者を含む組織図等があれば、更にベターと解されます。
財務状況も赤字、あるいは債務超過状況が続き、明らかにコロナ以外の要因を含み、事業遂行能力懸念がある場合は、本文中にそれについて懸念払拭すべくコメントすることが望ましいと思われます。

具体的コメントとその対応 事業化点2

事業化に向けて、競合他社の動向を把握すること等を通じて市場ニーズを考慮する旨を明確に記載すると良い。
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本指摘は「要領38P(2)②」の前半部とほぼ同内容。採択事例を参照すれば、ネット検索等により
補助事業の該当する市場規模や動向、有力企業等の戦略・価格・ターゲットとしている層(マーケット)を把握し、計画に対策等を含め、記載しているケースが多い。

競合状況外観の上、参入余地≒自社の差別化要因を記せばベター。
実際に、要領の後半部では「補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。 市場ニーズの有無を検証」と記載されています。

具体的コメントとその対応 事業化点3

補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有していると明確に記載すると良い。
事業化に至るまでの 遂行方法及びスケジュールをもう少し検討して欲しいと感じている
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上は、別々のコメントだが、両者を併せると、「要領38P(2)③」の前半部の内容と一致。採択事例を参照すれば、補助事業の項目別スケジュール(その段取り、クリヤーすべき課題等)を明示しているケースが多い。人材面の優位性・専門性の強調はベター。該当者なければ「雇用する」と記載するのも有。新たな強みを作り出す、その為、不足する強みを提携(パートナー)やDX技術導入を活用して補強すると記載すると受けが良いようです。既存との「シナジー」はお約束です。

なお、③の後半部分では補助事業の課題を明確にし、課題解決方法の妥当性の説明を求めています。

具体的コメントとその対応 事業化点4

補助事業としての費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性等)が高いことを記入するとより良い
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「要領38P(2)④」の前半部の内容と一致。
採択事例を参照すれば、単なる収益計画(目標とすべき付加価値額≒生産性の向上)だけでなく、具体的根拠となるデータ、セグメント情報、事例・試行結果・顧客ニーズ把握等を明示しているケースも見受けられる。中長期的観点も有効。
既存事業とのシナジー効果(人材・技術・ノウハウの活用)を強調すると「審査員受け」すると支援者間では専らの声。他に、「効率化」「選択と集中」も審査員好みのキーワード。

具体的コメントとその対応 事業化点5

事業遂行について判断材料が少ない為、公募要領をもとに事業計画書をより明確に記載すると良い
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読みようによっては、全否定に近く、実に辛辣なコメントと言えます。
しかし、実は、このコメントこそが最も多く指摘され、事業化点のみならず、再構築点でも、同一の指摘が繰り返されています。
このコメントに接した場合、虚心に事業計画全体を見直し、体制面や効果、実現性等を再検討し、より納得性の高いものにする必要があるかも知れません。

具体的コメントとその対応 再構築点1

事業再構築指針に沿った取組みであることを明確に記載するとより良い。
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「要領38P(3)①」の前半部の内容と一致。
「事業再構築指針」とは、本制度開始に伴い制定されたもので、その後の改訂を経て、現在の貌になっていますが、要は、再構築の5つのパターンと、その定義が明示されています。

「分かり切っている話じゃないか」などと思わず、「審査員向け」と割り切って、 どのパターンのどの部分に該当するかを明示しましょう。
また、「自社のありたい姿」(SWOT分析活用)の観点から補足するのもベター。
ところで、要項の後半部では「全く異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築」が問われているのですが、一方で事業化点では「既存事業とのシナジー効果」を重視する等、一見矛盾する内容となっています。

個人的印象ですが、採択結果を見る限り、審査員の大半は「異分野への思い切った大胆な再構築」より「既存事業とのシナジー」にシンパシーを感じているように見受けられます。

具体的コメントとその対応 再構築点2

既存事業における売上の減少が著しいなど、新型コロナウイルスの影響で深刻な被害が生じており、事業再構築を行う必要性や 緊要性が高いことをより明確に示すことが望ましい。
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「要領38P(3)②」の前半部の内容と一致。(最新版から、「原油・物価高騰等」が追加されている)採択事例を見ると、単に10%売上が減少したと言う要件を満たすに留まらず、『事業継続上深刻な影響があり、だから、この再構築に活路を見出すしかなかった』と言う論理展開が多く見られます。

実は、これは、私が支援した(不採択)先でのコメントです。
有態に言えば、コロナの影響はごく軽微で業績は堅調で、当初から「量産の為、導入したい設備がある」と言う(制度趣旨に反した)相談でした。
色々、公募要領の筋立てに沿う様、ロジックを再構成した積りでしたが、審査員から、しっかり見抜かれてしまったようです。

具体的コメントとその対応 再構築点3

市場ニーズや自社の強みを踏まえ、「選択と集中」を戦略的に組み合わせ、リソースの最適化を図る取組であることを明確に記載するとより良い。 
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「要領38P(3)③」と一致。
私の支援先(不採択)の例。網羅的に、あれもやります、これにもトライします、と少しでも売上や利益を伸ばすべく計画を作った先です。申請時点から「手を広げ過ぎたかなあ」とは思っていました。総花的でなく、ある程度アイデアを絞り込む必要があるのかも知れません。

「選択と集中」…こう書くことは簡単ですが、計画上で落とし込むことは必ずしも容易ではありません。
しかしながら、このキーワードは「市場ニーズ」「シナジー効果」「地域貢献」と並んで、審査員の好物の様です。多くの不採択事例で、これらのキーワードが散見されています。

事業化点3の記載事項も参照ください。

具体的コメントとその対応 再構築点4

先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域のイノベ ーションに貢献出来る旨を明確に記載するとより良い。 
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「要領38P(3)④」と一致。

採択事例を見ると、必ずしも、DX産業とは言えない事業でも、ネット申込、ネットによる顧客動向把握・分析、EC、キャッシュレス、IoT、ドローン、VR、仮想現実活用等少しでもデジタル的なキーワード(要素)を加味しようと、皆さん、あれこれ工夫されています。

雇用関係、地域特性、特産品等「地域貢献」「地域興し」の側面を印象づけることも重要です。いずれにせよ、こららのキーワードは「市場ニーズ」「シナジー効果」「地域貢献」と並んで、審査員の好物の様です。
不採択例収集の結果、この「改善ポイント」は数多く示されていました。AIによる「虎の巻」でも、ここで合否が分かれることが示唆されています。
事業再構築補助金に関する 傾向分析調査 (jigyou-saikouchiku.go.jp)

具体的コメントとその対応 再構築点5

事業遂行について判断材料が少ない為、公募要領をもとに事業計画書をより明確に記載すると良い
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読みようによっては、全否定に近く、実に辛辣なコメントと言えます。
しかし、実は、このコメントこそが最も多く指摘されており、再構築点のみならず、事業化点でも、同一の指摘が繰り返されます。
このコメントに接した場合、虚心に事業計画全体を見直し、必然性、デジタル化、地域イノベーション、選択と集中等を再検討し、より納得性の高いものにする必要があるかも知れません。

改善ポイント対応 【総括】 

改善ポイントは、これまで見た通り、現在ではほぼ公募要領の「審査項目」そのものであり、いずれも抽象的な表現に終始しています。

また、全ての改善ポイントが開示されている訳でもありません。コメントの一言一句に過剰に反応しても結果に結びつかないことも。換言すれば、公募要領の各項目について、忠実に事業計画に記載してゆけば、最低限の得点は可能と思われます。

但し、個別審査項目も重要ですが、まず、A~C評価に着目し、C評価の場合は再構築のプラン・アイデアそのものを、制度趣旨・必然性・有効性・実現可能性・遂行能力から見直す必要があるかも知れません。

また、時間がない審査員に洩れなく、的確にポイントを訴求すべく「見せ方」の工夫をすることが大事だと思われます。

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